天然素材の床と壁が、豊かな暮らしをつくる。

2018.09.01

 

落ち着いた色合いの壁と床に、柔らかな暖色系の灯り。大きな家具はダークブラウンのウォールナットを基調としていて、耳を澄ませばゆったりとしたリズムの音楽も聴こえてくる。空間全体が心地よく調和して、洗練されているからでしょうか。建物自体は一般的な分譲マンションなのに、あの安易で画一的な印象もありません。けれど緊張感も一切なくて、いつの間にか寛いだ気分にもなっていく。子どもたちの声と足音が元気に響き、ゆっくりと時間が流れていく。どうやらポイントは、天然の素材感。そして「人間の三大欲求を満たすため」の家づくりにあるようです。

 

 

−こんにちは。間取りがユニークですね。大きなリビングの真ん中にバスルームががあるような。

夫:「そうですね。バスルームを境にして2部屋に分けたりもできたんですが、ひとつに繋がった状態のままにしてあります。この部屋はもともと母が購入して暮らしていたんです。それを賃貸で借りているだけなので、間取りは母の好みというのが大きいかもしれません」

 

 

−ここでの暮らしは長いんですか?

夫:「越してきたのは7年前ですね。床も壁もその時に手を入れました。堀田カーペットの堀田さんとは、共通の友人を介して知り合って。その話を聞いたら、これはもう入れなきゃダメだと思いました(笑)。ちょうどその頃、妻の出産が控えていて、子どもにとって良い住空間を作りたいと思っていたんです。ハイハイしたり、転んだりしても安全な床にしたくて。子どもがいる友人の家を見たりすると、クッションマットみたいなものを敷いていることが多かったんですが、あれは嫌で。目がチカチカするようでね。カーペットなら色もいいし、これだなと思いました」

 

 

−ウールという素材は肌にも優しいですし。

夫:「基本的に、自然の素材に囲まれていたいっていうのがあるんです。日本はプラスチックに囲まれすぎていると思うんです。フローリングも本物の木じゃなくて塩化ビニールのクッションフロアだったり、壁紙も本物の紙じゃなくて、ビニールクロスだったり。これは僕の仕事でもあるのですが、人間の三大欲求を満たす家づくりをしたいんです。とくに性欲が出てくる家づくりをしないと、日本はダメになると思っていて。この国は長いこと少子化などと言われているけど、きっとそれは住空間のせいでもある。だからこそ、壁はビニールクロスをやめて紙にペイントをしたいし、床は本物のウールにしたかったんですよね」

 


 

−なるほど。そういう目線での家づくりはあまり聞いたことがありません。

夫:「欧米と同じような暮らしをしているようにも思われていますが、ぜんぜん違います。日本では主寝室のとなりにシャワールームなんてなくても平気じゃないですか。でも欧米ならそれが普通ですよね。寝室の明かりも日本ではいまだに蛍光灯ばかり使っているし。あの白い光を浴びたら、そんなことする気もなくなりますよ。その電気を消すために、ベットから立ち上がって部屋の入り口まで歩いて行って消さなきゃいけない。そんなのナンセンスですよ」

 

 

−カーペット施工法も独特ですよね。敷き込みではなく、フローリングに載せているだけになっています。

夫:「本当はクッションを入れて敷きこんだたほうがいいんでしょうけどね。ただ、リビングに床暖房が入っていたんです。それを外してしまうのはもったいないなと思って。賃貸だったというのもありますし。それでフローリングをいじらずに、カーペットを載せるだけにしたんです」

 

 

−壁の色との相性がとてもいいと感じました。

夫:「壁はもともとあった壁紙をはがして、紙製のペイント用のクロスを貼って、その上から塗っています。ペンキはオーストラリアから仕入れているものですね。ヨーロッパではよく使われてますよ。カーペットとの相性がいいのは、自然の素材同士だから。色や家具は妻が決めたんです」

 

 

−なんというか、すごく落ち着く空間ですね。

妻:「ありがとうございます。でも、母の世代くらいからは『暗い』って言われたりもしました(笑)。色だけじゃなくて光量のせいでもあるかもしれませんが。もっと明るいところで子育てをしたほうがいいんじゃないか、とか。でもある時、『親が落ち着いた気持ちで子育てするのが大切だから、これでいいんだよ』って言ってくれた方もいたんです。たぶん実際にも、そうだと思うんですよね」

 

 

夫:「家具選びでいえば、フローリングは難しいと思うんですよね。床も家具も木製だと、木材ばっかりの部屋になってしまって、お腹いっぱいになってしまう。それが統一感のあるカーペットの床と壁になっていれば、家具も合わせやすいと思います」

 

 

−実際にカーペットの上で暮らしてみて、いかがでしたか?

夫:「やっぱり、どこでも寝そべれるっていうのが大きいですよ。本当に何の不満もなくて。次の家でもカーペットがいいなと思いますから。冬は床暖房をつけると、じわっと暖かくなって、それだけで心地いいし。湿気を吸ってくれるから、夕食に鍋料理をしても結露しないんですよね。だから夏も、ジメジメした感じがしません」

 

 

妻:「そうですね。カビとか結露とか、そういう湿気への悩みがなくなりました。昔はカーペットってダニとかアレルギーとかの温床だって言われたりもしてたけど、ぜんぜんそんなことないですし。むしろ塩ビのクッションフロアの質感のほうがイヤだなって思います」

夫:「掃除が大変っていう印象もありましたけど。でも今はルンバを使っていて、それに任せっきりですね。あとはときどき、ハンディの掃除機をかけて。それだけで十分じゃないかなと思っています。ほんとうはスチームをかけたりしたら、もっと毛足が立ったりするのかもしれませんが、結果として7年経っても気にならないくらいです」

 

 

−子育てという点でも、想像どおり魅力的でしたか?

夫:「もちろん、騒いで転んだりしても安心ですし。それにとにかく、子供はどんどん汚していくわけですよ。食べかすだったり、落書きだったり。でも時間が経つにつれて、徐々に落ちていってくれるのがわかるので。安心して子供たちを自由にさせられるんですよね。この壁もそうですが、自然のものって厳密には色が均一になっていませんから。そもそもが、まだらというか、不揃いというか。だから汚れもそんな気にならない。僕の性格かもしれないですけどね(笑)」

 

 

妻:「それはそうかもね(笑)。でも最初は汚れにも敏感に反応してましたけど、今ではそんなに目くじら立てることもなくなりました。暮らすってそいうことですし」

 

 

−まるで家族と家が、ともに成長しているような。そんな感覚なのでしょうか。

夫:「そうです。本物の素材だったら、時間が経って傷が入ったりしても、味になっていくじゃないですか。でもビニールやプラスチックだと、そうはならない。だから日本の住宅はできた時が最高で、あとは少しずつダメになっていくだけなんだと思います。もしそれが人間だったら、そんなの寂しいじゃないですか。生まれた時が最高だなんて。実際には日本の住宅で、それが現実に起きている。せっかく長年住んで愛着もわいてきたのに、価値がどんどん下がっていったりね。ウールのカーペットとか紙の壁紙とか、その素材の魅力にもっと気づいてもらえたら、暮らしももっと楽しくなると思います。昔は柱に刻みながら身長を測ったりしたじゃないですか。その代わりになることをやりたいと思って、僕は仕事としている“PORTER’S PAINTS”を探したんです。カーペットもきっと同じことですよね」

 

 

(プロフィール)

name: 的場家

house info: マンション(2LDK)

location: 神奈川県川崎市

family: 夫、妻、長女、長男、次男(この時はお母さんのお腹の中に)

occupation: 街つくりコンサルティング業 経営(夫)、産休中(妻)

www.nengo.jp

 


Photo : Keisuke Ono

Text : Satoshi Taguchi

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