CARPETROOM PROJECT

そして家族になる、はじまりの部屋

2020.02.23

カーペットに座る二人大阪・天神橋エリアにあるヴィンテージマンションの一室。玄関のドアを開けると、ガラスの壁で隔てられたベッドルームが目に飛び込んでくる。リビング全体を見渡すことができるキッチンと寝室の1LDK。ミニマルな間取りながら、空間が広く開放的に感じられるのは、ガラスが光と視線を通してくれるから。結婚を機に、マンション購入とリノベーションを決めたという森岡さん夫妻の自宅には、こうした素材の特徴を生かした細部への工夫が随所に見られます。ここから、家族としての生活をはじめるための家づくり。大切なのは、住まいにあった暮らし方ではなく、生き方にあった住まいという視点で考えることなのかもしれません。

室内の様子

ーそもそも、中古でマンションを買おうと思ったきっかけは何だったのでしょう。

優樹さん:「結婚して一緒に住む時に、とりあえず賃貸で住みだしてもいいかなと思ったけれど、とにかくリノベーションをしてみたくて。たぶん急にはできないから、徐々に勉強からはじめてみようかと、友人の紹介で工務店さんに話を聞きにいったんです。そしたら、とりあえず物件がないと話がはじまらないので、物件を探しましょうと言われて」

ミカさん:「翌週から物件探しをはじめたのですが、すぐに『いい物件がありました』と電話があって。早速見にいって見たら(マンションの)1階に入っている店が二人のお気に入りのレストランだったんです。それで、即決だったよね」

ダイニングテーブルに座る二人

ーリノベーションのテーマなどはありましたか?

優樹さん:「54平米と狭いので、仕切りを作らないで、なるべくそれを感じさせないよう意識しました。まずはじめに決まったのはキッチンでした」

ーたしかに、空間の中心にありますものね。

優樹さん:「将来は子供ができることも考えて、やっぱり料理しているときに全体が見えるように。ここが決まったら、あとはどんどんできていきました」

キッチンの様子

ーいいキッチンがあると、料理にも気合いが入りますね。

優樹さん:「一人暮らしの時はあまり増やせなかったので、ずっと欲しかったものを二人で買いに行ったりしています。器も最近揃えたものが多いですね。(食器棚に手を伸ばしながら)ここらへんはどちらも有田焼で、一見似ているんですけれど、全部違うんですよ。モダンな形で、マットな質感が気に入っていて」

キッチンの調度品

ーよく使う食器はどれですか?

ミカさん:「OXYMORON(鎌倉のカレー屋)のためにつくられたイイホシユミコさんのお皿かな。野菜炒めとか何気ない料理に合わせても、美味しそうに見えるのが良い」

優樹さん:「僕は、松徳硝子のうすはりグラスでビールを飲むひとときが至福です」

ーこうして伺っていると、お二人ともテクスチャの感じられるものがお好きなんですね。

優樹さん:「内装材のメーカーに勤めているので、職業柄もあるかもしれませんね。特に、ガラスとカーペットはインテリアに取り入れたいと思っていました。普段から床に座ることが多くて、リビングにごろんと横になってくつろぎたいので、スペースは広くとりました」

室内の棚やグリーン

ー床も底上げされていますよね?

優樹さん:「昔の物件なので、やっぱり低くて。30センチくらい上げましたね」

ーカーペットの色は、どのように決めましたか?

優樹さん:「グレーとブルーで、最後まで悩んだんです。ベージュとかグレーの方が何にでも合うし、ブルーは男性っぽくならないかなって。少し冒険でしたが、結果的にブルーにして良かったと思っています。カーペットを基準に、壁の色が暗くなりすぎないように白を増やすなど調整をしていきました」

室内の様子

ー住みはじめてみて、使い心地はいかがですか?

ミカさん:「すごく気持ちいいので、素足で歩きまわりたくなる」

優樹さん:「遊びに来てくれた人もみんな、いいねって言ってくれます。冷蔵庫の搬入で来られた業者さんも『ふっかふかですね!』って驚いていたよね」

ーまさに理想通りのリノベーション。逆に、想定外だったことはありますか?

優樹さん:「すっきりとしたテイストにしちゃったので、散らかっていると成立しないのが、唯一大変なところかな。そのぶん、カーペットだと汚れが目立たないから助かっています。二人とも働いているので、平日はなかなか掃除できないので」

カーペットに座るみかさん

ーお仕事の帰りは、遅いんですか?

ミカさん:「私は、遅くても20時半くらい」

優樹さん:「22時くらいに帰ってきてよくみる光景は、(ミカさんが)クッションを枕にカーペットで寝ている姿」

ミカさん:「ここでいつもテレビを見ているからね、ついウトウトしちゃう。ソファーとか置かない代わりに、窓際の椅子を背もたれになるようにしているんです」

笑顔で会話する二人

ー新婚では、これから家族が増えたりと暮らしもどんどん変わっていきますよね。

優樹さん:「子どもができるまでは賃貸、って考えの人も多いけれど、常に居心地のいい空間にいたいって持ちが強くて。この家、二人で住むには良い感じなんですけれど、子どもが生まれることがあったら、広いところに引っ越したい気持ちはあります。もう一回リノベーションしたらもっとよくできるんじゃないかって。だから終わってほしくない、つくっている過程が一番楽しいんです」

(プロフィール)
name: 森岡家
house info: マンション(1LDK)
location: 大阪府大阪市
family: 夫、妻
occupation: 内装材メーカー デザイナー(夫)営業(妻)


Photo : Keisuke Ono
Text : Hiromi Nagano

Share