DICTIONARY
カーペットの耐用年数
カーペットを購入する際、誰しもが考えることの一つに「このカーペットは何年くらい使えるのか?」ということがあると思います。高価なカーペットを買う場合には、なおさら気になるところです。
カーペットの耐用年数を考えるとき、「おもて」と「中身」に分けて考える必要があります。
「おもて」について
「おもて」つまり毛足部分に関する耐用年数です。毛足が擦り切れて、毛がない状態になった時点で商品の寿命と考えることができると思います。
置敷きのラグなどであれば、ほとんどの方が毛足がなくなる前に、汚れやヘタリで買い替えをされると思われます。
一方敷き込みのカーペットの場合、新たなカーペットに敷きかえることは手軽な作業ではないので、そのままにすることも多いのか、40〜50年ほど使い続けられている場合もあります。40~50年経っても使い続けることは可能ではありますが、よく踏んだりこすったりする場所などは、毛足が完全になくなって、地組織だけになっていきます。
ただ皆さんが考える耐用年数は「毛足が完全になくなる年数」ではなく、「汚れやヘタリでさすがに使いたくないと思う状態になる年数」ではないでしょうか?これに関してはかなり個人差があり、一概に定義することは難しいです。
ただ、カーペットの素材によって経年変化の具合は変わってきます。
化学繊維の経年変化
例えば光沢感のあるナイロンやポリエステルのような化学繊維であれば、汚れを汚れとして認識しやすく、糸の撚り(より)が開いていいくことで光沢感がなくなってゆき、最終的にはボサボサとしたフェルトのような状態になってしまうことがあります。個人的な感覚ですが、化学繊維は全般的に買った時がベストな状態で、経年変化というよりも経年劣化してゆくように思われます。
天然繊維の経年変化
それに対し、天然繊維、特にウールに関してはさほど光沢はなく、細かな繊維が日々抜け落ちることで汚れも落ちてくれるので、多少シミが残っていても次第に薄れてゆきます。ウールに関しても糸の撚りは開いてゆきますが、さほど光沢感がないためか、自然な感じで、あまり気にならないように思われます。
そのようなこともあり、ウールに関しては、使い込むことで経年変化してゆく素材だと感じます。ただしウールであってもシャギーのような密度が低く、毛足が長いものについては、毛足がヘタってフェルト化してしまうので、例外です。
このように「おもて」に関しては、「毛足が完全になくなる」ということ以外では、個人の感覚差が大きく、一概に何年使えると定義することが難しいです。
中身について
手織り以外のカーペットの多くは、製法上何らかのかたちで樹脂(接着剤のようなもの)が使用されています。製法によって使用される樹脂は異なりますが、国産の多くに合成ゴムと炭酸カルシウムが含まれています。樹脂なので、時間の経過とともに黄変、劣化が進み、何年か経過すると炭酸カルシウムの成分が白い粉となって床に落ち始めます。炭酸カルシウムは石灰の粉ですので、強アルカリになります。
ただ粉が出たとしても微量なので、ラグから出る白い粉で体調を崩したといった話は聞いたことがありません。気になる方は、カーペットをめくって床に白い粉が落ちていたら、ご使用をやめる目安にしてはいかがでしょうか。床に落ちた白い粉は掃除機で吸い取っていただければ大丈夫です。更に劣化が進むと貼りあわせている裏面の布が剥がれてきたり、最終的には糸が抜けてしまう可能性があります。この状態になった時点で商品寿命と考えるのが一般的だと思います。
ちなみに弊社が製造してるウィルトンカーペットは、1枚の織物でできており、糸抜け防止などのために裏面に樹脂を薄塗りしています。他のカーペット同様、時間経過とともに白い粉は落ちますが、1枚布なので、布の剥離は生じません。
樹脂の成分や塗布量は製法や製造メーカーによって異なります。また、常に湿度が高い環境や、高い温度での使用頻度(ホットカーペットや床暖房の上など)など、ご使用の環境によっても劣化のスピードは大きく異なります。
そのため中身の耐用年数に関しても、一概に何年と定義することは難しい状況です。
20年使ったカーペットラグ
ここからは、実際に長年使われているカーペットの経年変化を見ていきます。使用状況や環境にもよりますが、ご参考にご覧ください。
弊社の「Local Woolen Court/Colored Court」と同じ、ウール100%のハンドタフテッドカーペットを自宅で20年ほど使用しており、今も現役で使用しています。はっきりと覚えているわけではないのですが、10年くらいで白い粉が出始めたように思います。ただ、床が白っぽいせいか気にならず普通に使っています。
約30-50年使った敷き込みカーペット
敷き込みカーペットをされて、約50年の住宅の様子を見せていただきました。よく使っていたリビング部分は30年ほど前に一度敷き変えているが、その他の部分は敷き変えを行っていないとのことでした。全体的に毛足がへたっている感じは見受けられ、部分的にシミなども見られました。だからといって、使えないというわけではありません。
マスタード色のカーペットは建築当初から約50年使っているもので、ベージュ色のカーペットはリビングで、30年ほど前にはりかえられたものだそうです。リビングで大半の時間を過ごしており、ベランダとの行き来も多かったため、窓側の箇所は、地組織が見えてしまっています。
50年経ったからといって使えないわけではありません。ただ、このように毛足のへたりなどが見られるため、カーペット本来の心地よさを感じるためには、20〜30年が目安のひとつかと思います。
まとめ
結局は、敷きかえたいと思う程度が、人それぞれになってしまうため、カーペットは何年使えるのか?という疑問に対し、はっきりとした結論をお伝えすることは、なかなか難しいです。素材などにもよりますが、床材として一般的なフローリングや畳も、同様のことがいえると思います。
ただ、これまでの経験上、ラグに関しては、ウール素材で、密度の高いものであれば少なくとも10年程度は問題なく使えます。経年変化も味として受け入れることができる方であれば20年くらいは使えるであろうと思われます。
また、敷き込みの場合、ウールのウィルトン織カーペットであれば最低でも10年、場所によっては20〜30年はお使いいただけます。商品の規格にもよりますが、廊下やリビングなど踏む回数が多いところは傷みやすく、寝室やプライベートルームなどは比較的に長くお使いいただけます。