DICTIONARY

「SHEEP PLAYING CARDS」トランプから観る羊の世界

このたびMakuakeで、世界の羊のイラストが書かれたトランプ「SHEEP PLAYING CARDS」を発表させていただきました。

2021年7月11日まで先行販売中ですので、ぜひこの機会にお求めください。

https://www.makuake.com/project/hottacarpet02/

さて、今回はその羊のことについてご紹介したいと思います。なお、堀田カーペットではできうる限り様々な文献や、関係機関などを調査していますが、今からご紹介する内容は、学術的根拠に基づくものではない旨を予めご了承の上、ご一読いただけますと幸いです。

1.羊とヤギはどう違う?(Joker)

羊は「ウシ科」に属することをご存知でしょうか? ウシ科から、「羊」と「ヤギ」にわかれています。

ヤギは、一般的にアゴヒゲがあり角は垂直に伸びているものが多いそうで、単独で行動します。羊の場合はあごひげがなく、角は巻いているものが多く、集団で行動する動物です。家畜として世界中で飼われているのは羊が多く、それは集団で生活をしているので管理がしやすいということが関係しているようです。

今回のトランプでは、Jokerだけ実はヤギ! 皆様も洋服などで聞いたことがある素材「カシミア」や「アンゴラ」は見た目は羊っぽいのですが、「ヤギ」に属している動物です。
カシミアやアンゴラの毛は、とても細く、光沢感があり高級ニットなどで使われている素材です。カーペットではほぼ使用することがありませんが、それは柔らかすぎると簡単にヘタってしまったり、毛が抜けてきたり、金額がとても高くなってしまうからです。用途によって最適な素材は異なります。

2.羊の祖先と羊の種類(ACE)

羊の祖先は、4種類いると言われています。Mouflon、Argali、Big Horn、Urialです。驚くことに、それぞれ今でも生息しています。今回のトランプでは、それぞれACE「1」のイラストになっています。

4種類の祖先から、現在は世界中に3,000種類もの羊がいると言われています。羊は、古代から人間とともに歩んできました。食肉として、被服として、そして敷物(カーペット)として。羊は、そうした歴史の中で、より多くの毛が取れるように・もっと紡ぎやすいように・それぞれの地域にあわせて頭数が増えるように、と様々な品種改良がされてきました。

その一番基になっているのが、Soayという羊。すべての品種の基となっていると言われています。Soayも今でも生息している種です。

羊のイメージは、「白くてかわいい」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実際には、真っ黒い羊、ウシのような風貌の羊、豚のような風貌の羊、うさぎのように耳の長い羊、など様々な姿をしています。そして毛並みも、柔らかい毛、長い毛、カーリーな毛など色々です。それぞれの毛の特徴にあわせて、洋服に使われたりカーペットに使われたりしていますが、その中で洋服の世界では「王様」と言われている羊がいます。それが「Merino」です。

3.羊の王様「Merino」(♦)

トランプではAustralian Merinoは、ダイヤの「King」にしています。

「Merino(メリノ)」と言っても、実はオーストラリアだけではなく、様々な地域で飼育されており、最近では南米のMerinoが重宝されているという話も耳にします。「Merino」の開発には、とても長いストーリーがあります。

1600年代、羊毛はとても貴重な資源でした。現在の金やダイヤモンドのような存在だったのだと思います。そんな中でより羊毛をたくさんとれるように、ということで羊の品種改良は繰り返され、Merino種の原型となった羊がスペインで開発されました。それがSpanish Merinoです。

1700年代までは、羊を独占するために厳しく輸出が制限されていましたが、戦争などによる財政難により密輸出されるようになり、ナポレオンに侵攻されたときには戦利品としてSpanish Merinoがフランスに持ち出されました。その後開発されたのが、Rambouillet(ランブイエ)というフランス版のMerinoです。

混乱の中、羊の輸出は解禁され、イギリスに持ち込まれてから一気に世界に広がることになります。イギリスは、大量繁殖のために南アフリカに持ち込み、その後オーストラリアに持ち込まれました。オーストラリアに到着したときのMerinoはわずか4頭だったと言われています。その後オーストラリアで、Spanish MerinoとRambouilletをかけ合わせてつくられ種として定着したのが、羊の王様「Australian Merino」です。現在の羊毛産業の発展には、イギリスの力がとても大きく作用しています。紡毛紡績機、そして堀田カーペットがつかっているカーペットの織り機、ウィルトン織機もイギリスの産業革命の時代につくられました。

堀田カーペットのブランドwoolflooringではMerinoの原型といわれているSpanish Merinoを使い、無染色(羊の毛の色そのまま)でつくった商品があります。

・HDC903
https://hdc.co.jp/woolflooring/carpet/hdc-903/

堀田カーペットのブランドwoolflooringにあるSpanish Merinoを使った無染色のカーペット

非常に柔らかい糸を細く紡績し、密度を高く織っている商品で、みずみずしい赤ちゃんの肌のような感触を感じていただける商品です。

トランプでは主に「ウール」として活用されている羊は♦にしています。それはこういった歴史を汲み取ったためです。

4.堀田カーペットが好んで使う英国羊毛(♣)

堀田カーペットの商品は、6カ国、30種類ほどの羊の毛をブレンドして使用しています。羊の種類の話をすると、どうしてもその羊だけで毛ができているように感じてしまいますが、実際には、同じ種類の毛だけでは糸にはなりにくく、特徴にあわせてブレンドをしています。

そんな中で、弊社が好んで使っているのが英国種の羊たちです。英国種の特徴は、とてもばさばさと荒々しく、洋服などにするとすこしイガイガしたように感じる毛質のものが多いのですが、とても膨らみがあって反発力があり、踏んで使うカーペットにとっては最適な毛です。英国では、現在も「英国羊毛公社」という国の組織があり、品種の管理や輸出についても、管理されています。ウールが貴重な資源であった時代の名残とみることもできます。

その中でもよく使われているのが、Welish MountainやCheviotという羊です。

英国種だけで約80種類ほどおり、英国羊毛は、品種で管理され輸出されているので、それぞれの羊毛の特徴が出やすいです。英国羊毛でつくった商品は、遊び毛がとても多いのですが、独特の光沢感があり、なにより最高の踏み心地になります。

一方、カーペット用のウールは主にニュージーランドのものが多いのですが、ニュージーランドでは、羊毛を番号で管理しています。お尻の毛、お腹の毛、背中の毛など丁寧に分類され、繊維の長さ、汚れ具合など洋服やカーペットに向いた綿にブレンドされ、輸出されていきます。ですので、安定的な品質、価格で提供されているのが特徴で、世界中のカーペットメーカーは主にニュージーランドウールを使用しています。

5.原生種(♠)

羊は品種改良の末に、世界中に3000種類ほどいると言われていますが、その中で基がよくわからない羊たちがいます。そのような羊を原生種といい、世界中に分布しています。

その中には、旧約聖書にも出てくる羊Jacobや、弊社の商品でも使用しているManx Loaghtanといった「これ羊?」と思うような羊たちもいます。

Manx Loaghtanを使った商品がこちら。

HDC919
https://hdc.co.jp/woolflooring/carpet/hdc-919/

HDC920
https://hdc.co.jp/woolflooring/carpet/hdc-920/

6.食肉の王様(♥)

羊は、毛として洋服やカーペットに使われていますが、その他にも布団になったり、食肉、革製品、乳製品としても活躍しています。毛として開発された羊も食肉として活用されていますが、その中でも特別な羊がSouth Downという羊です。

South Downは非常に小型な羊で、毛が短く糸にすることはあまり得意な羊ではありませんが、現在世界で食肉として活用されているSuffolkという種類の基となっている羊です。

昨年僕は日本の牧場を訪ね、羊飼いの方々のお話を伺ってきましたが、「種」にこだわりをもっておられる牧場もあれば、「種」にはこだわらずに飼育環境の工夫をされている牧場もあり、それぞれの牧場の考え方で育てられています。

「国産の羊毛は?」というご質問をいただくことがあるのですが、羊頭数の問題や、「洗い」という毛を洗う工程の問題などで、なかなか数量を確保することができないため、弊社の商品として使うことは難しい状況です。また、産業そのものもそれほど大きな産業ではなく、いわゆる国産種というのもいません。いないというよりも認定する機関がない、というのが実状のようです。

今回のトランプは、構想、リサーチ、制作におよそ2年ほどかかりました。ウールカーペットをつくる堀田カーペットとして、羊そのもののことを知る、大変よい機会でもありました。ぜひこのトランプで遊んでいただきながら、羊に関わる産業についても、興味をもっていただけるとうれしく思います。

最後に、文献を読みながらつくった羊開発の系譜図をご紹介します。こちらはトランプに付属していますので、トランプと共に楽しんでいただけると幸いです。