CARPETROOM PROJECT

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【WEB工場見学】ウィルトンカーペットとは?職人と機械が織りなすものづくり

ウィルトン織機と織工

堀田カーペットでは、「織物」のカーペットを製造しています。

一般的にカーペットは「織る」と表現されることが多いですが、現在日本で生産されているカーペットのほとんど(約99%)は、「刺す」という方法で生産されています。以前ご紹介したハンドタフテッドもそのひとつです。https://hdc.co.jp/handtufted/

堀田カーペットの本社工場では、「ウィルトンカーペット」と呼ばれる機械を用いて織物のカーペットを製造しています。織物のカーペットを作る工場は、国内でも希少になりましたが、私たちはウィルトンカーペットの良さを大切にものづくりを続けてきました。今回は、そんなカーペットがどのように作られているか、堀田カーペット本社工場でのものづくりをご紹介したいと思います。

世界ではじめてのカーペット織機

「ウィルトン織機」という織り機でつくられたカーペットのことを「ウィルトンカーペット」と言います。ウィルトン織機とは、手織りで生産されてきたカーペットが、イギリスの産業革命で初めて機械化されたもので、ウィルトン市で開発されたカーペット織機のことを指します。日本のカーペットの生産も、大正から昭和初期の時代に、現在の住江織物が織機を輸入し、生産がはじまりました。

ウィルトン織機はタフテッドにくらべ生産効率が悪く、タフテッド機の最も生産効率のよいものと比較すると、およそ1/100程度の量しかつくることができません。また、「機械織り」ではありますが、「織工」と呼ばれる職人の技術が必要で、現在ウィルトンカーペットメーカーは、国内に数社、織機台数も20台程度しか稼働していません。しかし、ウィルトンカーペットは、耐久性にすぐれ、織物でしか表現できないテクスチャーがあり、とても楽しい織機です。

カーペットの生産は、分業制になっています。糸づくりを担当する「紡績会社」、染色を担当する「染色会社」があります。今回は紡績・染色を経て堀田カーペットに糸が入荷されたところからご紹介したいと思います。

ワインダー

糸は、「カセ」という状態で入荷されてきますが、このままの状態では織機に糸をつけることができません。まず「ワインダー」という工程で、「木管」と呼ばれる木の芯に糸を巻き上げ、「コマ」をつくっていきます。弊社のウィルトン織機は、基本的に3.64m幅で生産され、そのためには、1色あたり約1,200個のコマが必要で、ホテルのカーペットのようにたくさんの色数を使う場合には、最大1,200個×5色=約6,000個のコマが必要になります。

こちらの準備をするのに、約2週間程度かかります。

入荷されたカセ

染色されたウール。カセの状態で入荷

カセから木管に糸をまきつけコマを作る様子

カセから木管に糸をまきつけコマを作る様子

糸が木管にまかれたコマ

1色あたり1200個のコマを準備する

コマ付け

ワインダー工程で準備された「コマ」は「クリール」と呼ばれる、糸を織機に供給する場所にセットします。新しい商品をつくるときには、1本ずつ手作業で、糸を結んでいきます。

コマをクリールに設置する

コマをクリールに手作業でセットする

1本でも糸が切れたら繋ぎなおします

製織

これらの糸をすべて使って1枚のカーペットを織ります。なかなか写真では全貌をお伝えするのが難しいですが、織機は幅約10m、長さ20mほどの大きな織機です。

クリールから糸が織機のところまで引っ張られて織られていきます。クリールに設置する糸は、表面に見える糸ですが、それ以外にもカーペットの裏側となる、ジュート麻の「地糸」、ポリエステルの「シメ糸」も、一緒に織り込まれていきます。すべての糸をあわせると、10,000本ほどの糸が織り込まれていきます。

クリールから織機へつながる無数の縦糸

クリールから織機へつながる無数の糸

緯糸(ぬきいと)と呼ばれるよこ糸は、「シャットル」にセットされ、バネを使って幅方向に織り込まれていきます。

カーペットの踏み心地で重要となる毛足は、実は織る際に使用する「ワイヤー」で決まります。このワイヤーに糸が絡まることで縦糸が輪状に形成され、ふかふかのカーペットができあがります。

薄いカーペットをつるくためには、低いワイヤーを使用すると、パイルの低いしっかりとしたカーペットを織ることができます。ワイヤーの先端にカッターナイフがあるワイヤーを使うと、毛先がカットされた「カット商品」になり、カッターナイフがないワイヤーを使うと、毛先が輪状になった「ループ商品」となります。それらを組み合わせて使うことで「カット&ループ商品」ができます。

織工が1台の機械に必ず一人つき、常に機械や糸、カーペットの調子を目と耳で感じとりながら織りあげていきます。一日で織れる反物は10m程度です。カーペットの1反は30mなので、1反織りあがるのには約3日かかります。

シャトルをもつ職人

よこ糸がセットされたシャットルが、生地幅方向に往復し織り上げられる

ワイヤーにそって生地が織り上げられていく

3.64mの幅を織るため、幅広く大きな織機

一人前の織工になるには10年ほどの年月がかかる

補修

30mで製織された反物は補修工程にすすみます。補修工程は、糸の結び目を除去したり、糸が切れてしまったところを縫ったり、製織工程でどうしても出てしまう不具合をまさしく「補修」する工程です。約10,000近い糸を同時に織り、また織機も創業以来代々使用している古いものなので、どうしても製織時にできる傷があります。それをこの工程でしっかり修復することで、皆様にお届けできる品質に仕上げていきます。

補修工程も、様々な不具合への対応が必要で、一人前になっていくには、5年ほどの年月が必要です。

カーペットを針と糸で補修している様子

1本1本丁寧に補修し美しく仕上げる

加工

補修工程が終わると、協力工場に一度出荷されます。協力工場では、カーペットの裏側にノリを塗って、糸が抜けにくくなる加工をすると同時に、ハンカチにアイロンをかけるようなイメージで、しゃきっとした反物に仕上げていきます。

補修場からクレーンで外に運び出される様子

カーペット1反はとても重く、補修場からクレーンで外に運び出される

検反出荷

加工が終わると、反物は弊社の倉庫に入荷します。入荷後は最終検反され、お客様のご要望のサイズにカットされ、出荷されていきます。

カーペットの反物は1反(30m)でおよそ250kgほどあります。専用の特殊なリフトを使って反物をおろし、手作業でカーペットを切っていきます。またラグに仕上げる場合は、縫製をします。

このようにして出来上がったウィルトンカーペットは、その後建築現場に運ばれ、最終的には現場で施工され、ようやく完成品としてお客様にお引渡しされていきます。

糸が入荷され、出荷されていくまでにおよそ2ヶ月。ウィルトンカーペットは、織機だけではなく、実にたくさんの人の手でつくられています。

写真だけではなかなか伝わりづらい部分も多いと思います。堀田カーペットの本社工場では、随時工場見学を受け付けております。私たちのものづくりの現場を体感しに、ぜひ一度ご来社ください。

WEB工場見学記事一覧
https://hdc.co.jp/category/dictionary/craft/

製造工程を動画でもご紹介しています。