CARPETROOM PROJECT

四六時中、カーペットとともにある家族。

2017.06.13

 

戸を開けて、中に入り、靴を脱ぐ。一歩踏み出すと、その足元には敷き込みのカーペット。大阪府堺市にあるこの家は、そこからずーっとカーペットの床が続いている。玄関ホールに廊下と階段。寝室や子供部屋、リビングダイニングはもちろん、キッチン、風呂場の前の脱衣所さえも。堀田カーペット株式会社の三代目、堀田将矢と家族が暮らす戸建です。少しやりすぎ? いえいえ、そんなことはありません。敷き込みのカーペットライフの可能性に挑む人らしい、ちょっぴり大胆で遊び心にみちた生活があります。

 

 

− こんにちは。まずは家の間取りを教えてください。

「2階建の3LDKです。1階にはLDKとバスルームやトイレ。中2階に寝室があって、2階は子供部屋になっています。いちばん下の子が生まれて5人家族になったときに新築しました。妻や建築家さんと相談しながら、なるべくカーペットの床が続くようにして、それを生かすような空間設計に。2年半前ですね。子どもたちはまだ小さいので、寝るときはみんなで川の字です」

 

 

− お子さん、みんな元気ですね。

「やばいです(笑)。カーペットの床になると、どこでも遊び場になるみたいで。飛んだり跳ねたり、好き放題やってます。2階の子供部屋は今はまだ家具や物がなくて広々してるので、特にここがはげしい。逆立ちしたり、なにか投げたり落としたり。僕も混ざってお相撲したり、ドッジボールすることもありますね。ウッドフローリングだったら危ないようなことも、躊躇なくやる。バク転の練習とかね。親の僕らも、カーペットだからっていう安心感があるから、目を離しがちっていうのもあるんでしょうけど。うちは3人兄弟なので、全員をずっとかまってられないし。子供がいっぱいいればいるほど、カーペットがいいのかもしれません」

 

 

− 床のほとんどがカーペットだと、いろんなところで遊べますね。

「そうですね。この家はだいたいぜんぶ、カーペットの床ですから。気がつくといろんな場所でいろんなことをしてます。段差があれば飛び降りるし、階段からも滑り降りたり。あとは逆にゴロゴロしたり。ウールのカーペットは、肌触りがサラサラして気持ちいいんです。だからいつもだいたい裸足だし。夏なんか特にいいんですよ」

 

 

− 夏がいいのは意外ですね。温かいようなイメージがあるので。

「ウールは撥水するけど湿気は吸うので、暑くても肌にまとわりついたりビチャビチャするような感じにはならないんです。だからいつもサラサラで気持ちいい。ゴロゴロしていて、いつの間にか昼寝してしまうこともよくあります。これは子供たちだけじゃなくて大人もですね(笑)」

 

 

− 食事はどこでとるんですか?

「リビングにあるローテーブルで、床に座って食べます。朝昼晩。もちろん食べこぼしも、飲みこぼしもありますよ。小さい子供がいますからね。よく『お味噌汁とかこぼしても大丈夫?』って聞かれることがありますが、ぜんぜん平気。ウールで液体も吸い込みにくいので、昨日も豚汁こぼしましたけど(笑)、すぐに拭けば大丈夫です。アイスクリームとかカレーみたいなとろとろしたものは、拭っても繊維の中に入ってしまうこともあるので多少大変です。まぁそれでも、お湯をかけてタオルを乗せて、上からポンポンたたくっていう作業4〜5回やれば、見た目も臭いもたいだい消えますから。最悪多少汚れがのこっても、毎日の掃除のたびに少しずつ消えていきます」

 

 

− メンテナンスも意外と簡単なんですね。

「うちのカーペットが、グレーに明るい茶色が少し混じるようなメランジの糸を使ったものなので、それで目立ちにくいっていうのもあると思いますけどね。無地の明るい色とかだと、もっと気になるかもしれません。でも基本的には、日々のメンテナンスはダイソンの掃除機だけですよ。あとは半年に1回くらい、スチーム掃除機。食べこぼしたり飲みこぼしたら、その都度という感じです。それでほとんど、建てた頃と変わりません。もちろん、場所によってはちょっとへたってきたなってところもありますけど。お風呂の前とかね」

 

 

− 脱衣所までカーペットというのは驚きます。

「ちょっとやりすぎかな、とも思いましたけどね。うちがカーペット屋っていうのもあってテストしてみたんです。もちろん、日常的に濡れるところなので、メンテナンスも必要ですし、ヘタってきやすいのもありますが、意外と妻には好評でしたね。子供たちがお風呂からあがるときなんて、だいたい髪もよく乾かさずに、身体中が濡れたまま。一番下の子(2歳)なんか特にそうで、追いかけながら拭いたり、服を着せたりするんですが、床がカーペットなので、そのままゴロンとさせておいても気にならない。タイルや木の床だったら、滑ったり、冷たかったりして、気になるところだと思うんです。『カーペットでお風呂上がりが楽になった』って言ってますね」

 

−キッチンまわりはどうしているんですか?

「アイランドキッチンになっていて、冷蔵庫の下以外はすべてカーペットです。設計時には木のフローリングにすることも考えたんです。スリッパを履いたり、床暖房を入れたりしたらいいかな、とか。でもそうすると、キッチンとリビングダイニングが分断されたものになってしまいそうでやめました。それで実はこの家に引っ越してきた当初、炊事場の床の上にだけカーペットの上にラグを敷いていたんです。濡れたり、油が跳ねたり、調味料や食材がこぼれたり落ちたりすることもあるかなと思って。でも今はそれもやめていますね。さっき話したみたいに、汚れてもすぐ拭いたり、ケアをすれば匂いだって残らないし。それよりもラグがあることで増える手間のほうがわずらわしいみたいです。掃除機もラグの上からかけて、さらにそれをどかして床もかけることになるので。僕らが思っていた以上に、ウールのカーペットのメンテナンスだけのほうが楽でした。あとは、台所の立ち仕事が続いても、床が程よく柔らかいせいか、足腰が楽になったみたいです」

 

 

− 家事をする奥さんならではの感想ですね。

「家族といっても、それぞれ行動も性格も違いますからね。子供たちも含めて、今はそれぞれがカーペットだらけの家での暮らしを楽しめていると思います。もちろん、寝室やLDK、階段や脱衣所など、どれも木の床よりも絶対にいいと断言することはありませんが、敷き込みのカーペットが生活の中にあることで、心地よさや楽しさが増えるってことはあるじゃないかって思うんですよね。実際に暮らしてみての実感として」

 

 

− 改善点も見つかったりするのでしょうか?

「それはもちろん。万能なものじゃないですからね。細かいところはいくつかありますよ。例えば階段のような人の往来がたくさんあるところは、フカフカしたものより、毛足が短くて密度が高く織られたタイプのほうがヘタりが目立たなかったな、とか。僕はそうでもないですが、日焼けや汚れなど経年の変化をなるべく出したくないところなら、杢調の糸の短くカットしたタイプがいいのかなとか。それを新しい商品にも反映できたらいいですね」

 

 

− ウールの敷き込みカーペットといってもいろんな種類があるんですね。

「毛の種類や織り方もいろいろですから。とはいっても、普段はそんな細かいことは気にしてないんです(笑)。家に帰って、素足になって、ソファを背もたれにして座る。床が柔らかくて、肌触りがよくて、天井が高くなって、子供たちは自由に遊んでる。そのへんで転がって寝てたりもする。心が落ち着きます。それで、やっぱりカーペットってええなぁって思う。基本はそんな感じなんです」

 

 

(プロフィール)
name: 堀田将矢
house info: 戸建(3LDK)
family: 5人家族(妻、2男、1女)
occupation: 会社経営(堀田カーペット株式会社)
https://hdc.co.jp


Photo : Keisuke Ono
Text : Satoshi Taguchi
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