内と外をつなぐ、暮らしのグラデーション
家の中心に設けられたウッドデッキの中庭。それに面して大きく開口を広げた3つの空間には、やわらかな光が降り注ぎ、気持ちの良い風が通り抜ける。オープンキッチンからはリビングやデッキまで見渡せるため、子ども達に目を配りながら家事ができて安心。中庭から家を見れば、まるで舞台を眺めるような面白さもある。そんな家の内と外、パブリックとプライベートが緩やかに繋がる、林さん一家の住まいを訪ねました。
自宅で週に数回、ピアノとヨガの教室を開催している妻の光さん。
この日も、ヨガをするお母さんの後ろで楽しそうに遊ぶ子どもたちの姿がありました。
「子ども連れでいらっしゃる生徒さんも多いので、遊びまわったら音がするでしょう。ヨガマットもフローリングの上に敷くよりも良いし、カーペットが環境として最適だと思って」
実際に、お母さんたちも「子どもが走り回っても安心。遠慮なく目をつぶってリラックスさせてもらえる」と嬉しそう。
ーここにはどれくらい暮らしているんですか?
「新築で、この春に引っ越してきたばかりです。最初は、2Fにロフトや書斎を作ったりと色々と考えていたのですが、どんどん削ぎ落とされていって、とてもシンプルな造りになりました」
ーシンプルにしていく中でも、こだわった部分はありましたか?
「私としては、ヨガとピアノができて、家事がしやすいことが大切でした。ピアノが置いてある部屋は防音扉になっていて、天井も高いので、ホールみたいな良い音色がするんですよ。(ピアノとヨガの部屋の間にある)リビングルームは、託児所代わり。すぐ近くに旦那の実家があるので、毎日のように“ばあば”が手伝いに来てくれるのも助かっています。子育てと仕事を両立するのに、本当にいい環境です」
ー多くの人が出入りされるようですが、プライベート空間はどのように確保していますか?
「お客さんは皆、玄関から入らずにベランダ(ウッドデッキ)から出入りしていますね。各部屋の間にレールだけは通してもらっていて、用途に合わせて部屋数や広さを調整したり、家具で仕切りを作ったりと工夫をしています。あと、お気に入りなのはカーテン。風が抜けるたびに揺れるプリーツがとても綺麗で。透き通るように繊細なんですけれど、斜めにラインが入っているから、外からは見えづらくできているんです」
ー中庭があることで、家族で楽しめる空間が増えるのも魅力的ですね。
「そうですね。親の目の届く範囲で、子どもたちをのびのびと自由に遊ばせることができています。夏は庭でプール遊びをしたのですが、少しくらい濡れたり、身体に砂が付いていてもカーペットなら気にならない。フローリングは傷ついたり、ジャリジャリが取れないけれど、後から掃除機をかけるだけで良いのが楽でした」
ーそのほか、平屋住宅ならではの醍醐味を実感することはありましたか?
「午後になるにつれて、西日もどんどん入ってくるのでずっと暖かいですし、風が抜けるので、通気性もいい。先日も、(中庭を舞台に)ピアノの発表会をしたんですよ。その後、夕涼みをしながらみんなでバーベキューを楽しみました」
ー引っ越してもうすぐ1年、今後の楽しみは?
「庭に植えられた桜の木は、結婚のお祝いにいただいたもので、もともとは1メートル程だったんです。引っ越すときに残していくのは忍びないからと一緒に連れてきたのですが、すくすくと成長してくれています。春になって桜が咲いたら、お花見ができる。グランドカバープランツも育てているので、春には中庭でヨガができたら気持ち良いだろうなぁ」
(プロフィール)
name: 林家
house info: 平屋建(3LDK)
location: 兵庫県南あわじ市
family: 夫、妻、長女、長男
occupation: 教師(夫)、ヨガ教室・ピアノ教室 講師(妻)
Photo : Keisuke Ono
Text : Hiromi Nagano