家族を繋ぐ、心休まる家。
「生まれも育ちも、この家ですよ」慣れ親しんだ築100年の日本家屋を増築したのが30年前。近藤さんは、この家で二人の子どもを育て上げ、現在もリノベーションを施しながら大切に住み続けています。写真家の夫と、バレエスタジオで多くの教え子を抱え、多忙な日々を送る妻。研究職の息子に、家族でドバイに暮らす娘。世界中を飛び回る彼らが元気でいられるのは、きっと、ゆっくり羽を休められるこの家があるから。夫として、父として、そしておじいちゃんとして、家族の帰りをあたたかく見守る近藤さんの愛情がそこにありました。
この日訪ねると、近藤さんと愛犬のジジが迎え入れてくれました。
「もともと今日は、カミさんも休みの予定だったんですけれど、仕事が入ってしまって。来週からバレエのコンクールがはじまるから、海外から来る審査員の段取りだとか」
ー それは大変ですね。コンクールなどのイベントがないときは、ゆっくりできるのですか?
「カミさんは、バレエ一筋ですね。だいたい朝の8時には起きて、そこから朝ごはんと身支度をして10時くらいに出て行きます。大人向けのクラスのレッスンはスタートが遅いので、帰るのは23時くらい。そこから食事して、お風呂に入って、なんだかんだ2時とか。わたしは11時くらいから家で作業をはじめることが多いです。わたしも、バレエの写真を撮りに行くこともあるんですよ」
ー なかなか夫婦で時間が合わないと、少し寂しいですね。
「まあまあ、そんなもんです」
リビングで話を伺っていると、近藤さんは素朴な土物のマグカップに淹れたコーヒーを出してくれました。
「このカップ、わたしの手作りなんです。なかなか大小揃わないんですけれど、愛嬌があるし、面白いでしょう。趣味で5年ほど続けています。あとは、庭の芝生いじりをしたり。最近、ピザ窯を導入したので、手作りのピザを作ることもありますよ」
ー 趣味を満喫されるには、最高の環境ですね。リビングも、木の梁が印象的であたたかく、居心地がいいです。
「約30年前、結婚するタイミングで増築したときに、依頼した設計士さんから『どんな間取りがいいか、あなたも勉強しなさい』と言われて、素人ながらに図面を引いたりしたんです。部屋数はいらないから、天井の広い空間が欲しいと希望しました。木目がはっきりとした松などをふんだんに使って、柱も隠さず、見えるようにしました」
ー その後、リノベーションもされたそうですが、その時はどのような点を改善されたんですか?
「リビングと寝室にカーペットを敷きました。膝を痛めていて、医者に言われて足元を固定するためにスリッパを履くようにしているのですが、足への負担を和らげるため。それに、ワンコもフローリングだと滑るので。(ジジは)14歳になって、最近は目も見えづらくなってきていて」
ー ジジのためのカーペットでもあるんですね。
「そうなんです。だから、ワンコが引っかからないように、毛足はループではなくてカットを選びました」
ー 実際に使ってみて、ジジとカーペットの相性はいかがですか?
「うちの場合、アレルギー持ちでホコリに弱いので、掃除もしやすいのが助かっていますね。カーペットって、案外メンテナンスフリーに近いんじゃないかな。フローリングのときよりも、掃除の回数は減った気がします。この辺りも本当はおしっこだらけだけど、匂いがしないでしょう? ペットシートで吸い上げて、お湯で濡らして、またシートで吸い上げるだけ。」
ー 寝室での使用感はいかがでしょう。
「足から冷えるという感覚がなくて、気持ちいいです。それに足音を吸収してくれて静か。息子の部屋はコルクの床で、歩くとダイレクトに響くから、そこも張り替えたいなと思っている」
ー 今は、息子さんも帰ってきているんですね。
「海外から戻って来てから1年くらい。ドバイからお客さんが来るから、と言われて一緒に食事をしたり。サウジアラビアとかイランとかにも友だちがいて。はたからみると楽しそうに見えるみたいだけれど、親は大変です」
ふと、壁に視線を向けると時計が2つ並んでいます。
「この時計は、ドバイとLAと日本の世界時計。ドバイと日本は、真逆の12時間差なんですよ」
ー なぜ、ドバイ時間の時計を?
「娘家族が、ドバイに住んでいるんです。子供は5歳くらいで、最近はまた少しずつ通訳の仕事とかを再開しているみたいです」
ー 息子さんも娘さんも世界を舞台に、行動力があって頼もしいですね。
「昔だったら、たまに電話がかかってくるかも分からないくらいだったけれど、今はメールもスカイプもあるし、距離感はないからね」
ー 娘さんやお孫さんとは、どのくらいの頻度で会っていますか?
「毎年、夏になると帰って来ます。6月から9月の3ヶ月間は、そりゃあもう、地獄ですよ」
ー そう仰りながらも、嬉しそうです。 お部屋の所々に飾ってある工作も、お孫さんが作られたものですね?
「ドバイって雨が降らないんですよ。だから日本に来て、傘をさすのが楽しかったみたいで。それでどうして、てるてる坊主なんだろうね」
ー 奥様と二人。これからの暮らしについてはどのように考えていますか?
「あまりまだ考えていないけれど、住みやすいところ、気持ちのいいところに住みたいねと話しています。でも、どこかに出掛けても、カミさんは『早く帰りたい』と言う。長く暮らしているからかもしれないけれど、過ごしていて息が詰まるようなこともないし、やっぱり住み慣れた家はいいものです」
(プロフィール)
name: 近藤家
house info: 2階建て(4LDK)
location: 大阪府松原市
family: 夫、妻、長男
occupation: 写真家(夫)、バレエ講師(妻)
Photo : Keisuke Ono
Text : Hiromi Nagano